お説教とマドレーヌ

忘れたくないこと。トキめいちゃったら投稿します。

そんな日々が、幸せだから──東山奈央 1st LIVE“ Rainbow” at 日本武道館

はじめに

東山奈央さん、2018年2月3日の武道館ライブ開催、本当におめでとうございました。2019年のライブツアーも楽しみにしています!

ということで、今更ではあるが東山さんの武道館ライブ、「東山奈央 1st LIVE“ Rainbow” at 日本武道館」について書いていく。参加された方々には当時のことを思い出すような、参加されてない方々には思わずライブBDを買ってしまいたくなるような記事にしていきたい。

東山奈央1st LIVE 「Rainbow」at 日本武道館 [Blu-ray]

東山奈央1st LIVE 「Rainbow」at 日本武道館 [Blu-ray]

パッケージ版が発売されるのは、本当に恵まれていて、喜ばしいことである。

もくじ

最初にまとめ

と、大見得を切ったは良いものの、1万字を大幅に超えてしまったこの記事を未参加未視聴の方に読んでいただけるとも思わないので、先にまとめを書いておく。

東山奈央 1st LIVE“ Rainbow” at 日本武道館」は、声優として絶賛活躍中・歌手としても当時1周年を迎えた東山奈央さんが、単独名義では初めての大型ライブを彼女の運命の月・2月に運命の地・日本武道館で行い、意表をつく舞台演出や可憐に纏った衣装の力を借りつつ、歌い、踊り、言葉を紡ぎ、東山奈央さんのいままでとこのさきを描き、そしてファンへの思いを伝えた、まさに彼女の集大成となるライブイベントであった。

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序章

私と東山奈央さん

さて、改めて。東山さんについて私がいくらかでも語るというのは、今まで東山さんとファンが積み上げてきたものを思えば畏れ多くて気が引ける面もあるので、まずは私の東山さんに対する立ち位置について明かしておきたい。

凡そ今を生きるオタクであれば、東山奈央さんの声をどこかしらで聞いたことがあるのでは、というくらいに、東山さんは多数の作品に出演していて、演じたキャラクターの数は枚挙に暇がない。私で言えば、『きんいろモザイク』『アイドルマスターシンデレラガールズ』『トリニティセブン』『バトルガールハイスクール』『白猫プロジェクト』『月がきれい』等々……。作品の数もそうだがその内容にも恵まれ、数多のキャラクターソングが発表されたり、イベントが開催されたものも多々あった。私も、キャラソンを音源として聴いたりライブイベントを見たこともあったし、小気味のいい語り口のトークに好ましさを感じていたりもした。

そのような中、東山さんは2017年2月に『True Destiny / Chain the world』でソロ名義アーティストとしてデビュー。『チェインクロニクル』は当時ほとんど見ていないので私個人としての実感は薄かったが、次クールの『月がきれい』は割と熱心に見ていたので、『イマココ / 月がきれい』は繰り返し聞く機会があった。折しも2016年-2017年前半は声優アーティストのデビューブームとでも言うべき時期1、デビューして当然の人、くらいの認識だった。

私は、良くも悪くもそれくらいの距離感だった。作品で名前をよく見る、ある意味で割と身近な人であり、それでいてファンとして特別に意識する訳でもない人であった。

20170826 Animelo Summer Live 2017 -THE CARD- 2日目

アニメ『月がきれい』で良く聞いていた東山さんの歌であったが、ライブで東山さん名義の歌を聞くのはアニサマ2017の2日目が初となった。と言ってもこの日もミリオンスターズが目的であったのだが。

チェインクロニクル』も2017年のアニメであったが、歌われたのはアニメ『月がきれい』より『イマココ』『月がきれい』と、攻めの選曲。『True Destiny』『Chain the world』より聞き馴染みのある曲(アニメのOPとEDで見ていたというだけであるが)だったので、大いに楽しめた。正直、アニサマのライブパートに関しては記憶も薄いのだが、ここでの『イマココ』は今よりも大人しめというか、聞かせる寄りのパフォーマンスだったように思う。

ライブパートが終わり、1stアルバムのリリースが発表される。ソロ名義アーティストの活動も順調なようで良かった。そして、1stライブの開催も決定。めでたいことだ。場所は、なんと── 日本武道館!?

今だからこそ告白すれば、私も1stライブの地に武道館を選ぶのはまだ尚早なのでは、と思ったクチだ。というのも、この年の4月1日・2日にて村川梨衣さんの1stライブ『梨の季節』を品川ステラボールで見たばかりだったからだ。『梨の季節』は本当に「これ以上ないほど素敵な日」で、村川さんのこれまでの総まとめ的なライブイベントであっただけに、かたや東山さんは、というほど綺麗な話でもなく。

客観的な指標があればどうしても比較してしまう、ということである。(アーティスト活動とはそういうものでもあると思う。)つまりは、妬み・羨み・対抗心だ。どんな光景を見せてくれるのか、純粋な期待と言うよりはむしろ意地悪い観点も混じりつつ、良くも悪くも楽しみにしながら知り合いのオタクの連番に入れてもらった。

アルバム『Rainbow』発売~ライブ直前まで

2017年10月25日、1stアルバム『Rainbow』発売。2017年12月の温泉むすめのライブなどが目前に迫っており、しっかりと聞き始めたのは直前の2018年1月になってからだったと思う。ライブ前の私のツイートを眺め返していたら、『君と僕のシンフォニー』『My Way』あたりを楽しみにしていたようだ。

アルバム『Rainbow』を何周かする以上のこと、例えば、東山さんが武道館に至るまでに思いを巡らせたりだとか、インタビューを読んだり、ファンの話を聞いたりだとかは、しなかった。それは、上述したこともあり、武道館当日に東山さんから見せられるモノをもって判断したいという思いがあったためだ。だがそれは理由の半分で、もう半分は単に準備に割く時間が作れなかっただけでもあった。(クソイベンター)

ライブ当日、九段下駅には大体30分前くらいに到着していて、ものすごいフラスタの数に圧倒されながらも一つ一つ見ることはせず(時間的にも出来ず)、15分前くらいにはさっさとスタンドの自席に着いていた。物販購入も0。

20180203 ライブ本番

以下、ライブのセットリストに沿って感想を述べていくが、この感想はライブ直後に紡ぎ出した生のものではなく、ある程度の時が経っての、「ズルい」感想であることを予め明記しておく。また、このライブでは曲目の進行に伴って様々な趣向を凝らした舞台演出がなされていくのだが、それらのネタバレとなってしまうことをご容赦願いたい。欲を言えば、こんなオタクのブログなんかを読む前にまずはパッケージを買うなり借りるなりしてライブ映像を見て欲しい、といったところである。

衣装1着目・ポップパート

01.君と僕のシンフォニー

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それまで煌々と会場を照らしていた照明、その暗転は、いよいよライブが始まるという合図。誰のライブであっても、この瞬間の高揚感は……などと考えていた刹那、センターステージに向けられたスポットライト。そのふもとには、横たわったマイク。

やや遅れて、前方ステージに立つ東山さんにもスポットライトがあたる。東山さんは、ゆっくりと、しかし着実に、花道、センターステージへと歩を進め、マイクを拾い上げ、最初のワンフレーズを歌い出す──

ひとりきりじゃ 辿り着けない景色
今こうして 笑いあえるキセキ
また会えたね 優しく微笑むから
あの日のように 涙あふれたんだ

『君と僕のシンフォニー』の「君と僕」には様々な関係性がある、と東山さんは語っていて2、実際に『君と僕のシンフォニー』は見聞きする我々の個人的体験にまで敷衍出来る、普遍的なメッセージ性を持つ曲であると思う。しかし、こと最初のフレーズに関しては、そして、MVと同じ、この光景を見せられては、特別な意味合い──即ち、歌手デビューを果たした東山さん自身──が強く強く姿を現してくるのだ。ああ、これ以上、東山奈央さんの1stアルバムの1曲目、1stライブの1曲目に相応しい曲があろうか。

楽曲『Rainbow』との二曲でアルバムのリード曲とされたこの曲は、歌詞を読み込むめば読み込むほど味わい深くなる。そんな曲に過度の演出は必要なくて、左右の階段で繋がれた一段高い位置の、もう一つ高い位置にあるバックモニターには空にはためく七色の帯、というシンプルな映像(この映像もまた良いのだが)、ステージも歌い終わるまで東山さんはセンターステージにとどまり、後奏とともに前方ステージへ戻っていく、という構成。ただただ東山さんの歌と一体になって体をくねらせていた。

02.True Destiny

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圧倒的に聞かせる曲である『君と僕のシンフォニー』から一転、ノリにノラせる『True Destiny』。アーティストデビューを飾ったこの曲もまた開幕の位置に相応しい曲であるが、静と動、アルバムリード曲とアニメタイアップ曲、等々『君と僕のシンフォニー』との対比が面白い。前方ステージに戻った東山さんは上手から下手までの広大な舞台を歌いながら駆け回るし、観客は「なお」コールをはじめとしてわかりやすくノレる、アニメタイアップらしい曲だ。

MC1

ここで開幕挨拶にあたるMC。「声優・歌手の東山奈央です。」と高らかに名乗る。

喋りたいことも歌いたい曲もいっぱいあると言い、まずは8月のアニサマにてライブを発表してからはや半年、無事にライブを開催することが出来て良かった。声優活動を8年間やってきたなかで、歌手活動も1周年を迎えることができた。声優活動も、歌手活動も、このライブと同じ2月にデビューした。と。そして、東山さん自身は過去のアニメのイベント等を含めても、武道館の舞台に立つのは初めてとのこと。これは当時も意外に思った。

こうして改めて書き起こすと、どの話も文脈が繋がっていて、今ここのタイミングで話すべき内容であることを話しているのがすごい。

MCの後、東山さんは前方ステージの中央で一旦背を向けて水を飲み、まさにステージ中央のその位置で客先側を振り返り、次の曲を歌い始める。

03.Bright Heart

朝の幕が上がる 映画のプロローグのよう

歌い出しの歌詞に合わせて、幕が上がり朝焼けの東京・新宿を映し出すバックモニター。そして、その幕に合わせて、なんと東山さんも浮かび上がる。──というのも、実は足元に可動式の階段があり、この曲まで平面状になっていた、ということだ。

上手下手に加え、中央にも出来た階段。その中腹に立っていた東山さんは一段上のステージ、更にもう一段上へと階段を上り、バックモニターと同じ地平に。

きっと炭酸が弾けるスピードで

ここで東山さんが斜め上を下手側・上手側と指さすと、それに合わせて泡の弾ける映像が流れたり、

針が6を回る

ここで後ろの映像、時計の秒針に合わせて東山さんが腕を動かしたり、とムービーとのシンクロが図られた面白い演出だった。

この曲は『イマココ / 月がきれい』の初回版・通常版収録のカップリング曲(アニメ版のカップリング曲は村下孝蔵の『初恋』カバー)で、アルバム『Rainbow』には収録されておらず、当時は会場で初聴きであった。先述の演出もあって、この曲あたりで衣装や舞台等に少し意識を向けていたような気がする。ちなみに、1着目の衣装はアルバム『Rainbow』のジャケットと同じものだ。

04.Day by Day

前奏の間に最下段のステージまで降り、下手へ上手へと歩き回りながら、歌詞に合わせた細かいフリをしていく東山さんが見どころ。特に

恋だって人並みにしてきたけれど(hah hah hah hah)

の振り付けが良き。また、2番サビ以降の

Day by Day by ...

の合唱も楽しい。

今まで全く触れていなかったが、このライブは生バンド演奏で、パッケージ版の映像ではこの曲で度々ドラム視点やキーボード視点になる。もちろん、1曲目の『君と僕のシンフォニー』から演奏しているのだが、舞台の照明や演出もあって私が生バンド構成であると意識させられたのは、MC1~この『Day by Day』あたりだったと思う。

MC2

『Day by Day』の客席合唱に触れて、東山さん自身も合唱部出身であり、小さい部活ながらも歌手としての志がそこから生まれていったこと、そして、部活の後輩が武道館に来ていることを明かす。しかも、どうやら招待枠ではなくチケットを取って来ているようだ。

感動的なエピソードが自然な流れで一つ、また一つと語られていき、今映像を見返しても驚愕する。きっと、この裏にも日の目を見ることのなかった沢山のエピソードがあったに違いない。

東山さんの沢山の関係者が見ているこのライブは、「人生のお祭り」──。キャラクターと寄り添ったライブや、ユニット仲間のローダンセやワルキューレも登場しない、東山さんただ一人のためのライブ。冗談交じりにそう言いつつ、引いてくる歌詞は『Day by Day』の「まるで夢の中みたい」。

バックモニターや動く階段にもしっかり触れつつ、次の曲へ。

05.グッバイ・アンブレラ

上手下手から一人ずつ、7色、を遥かに超えた、カラフルな傘を持ったバックダンサーが入場。東山さんもこれまでの曲より大振りなダンスとなる。この振り付け、バックダンサーのものと合わさったり合わさらなかったりするのだが、とにかくキレッキレで、東山さんが一番踊れているのではないかと思うくらい。先のMCで、「階段で楽させてもらったぶん次の曲は頑張る」との宣言通りの魅せ場。

そして、観客の持つペンライト。公式グッズとして出されたこの「虹のペンライト」は、遠隔操作によって色がひとりでに変わっていくという逸品で、これまでも楽曲に合わせて東山さん側の定めた色に光っていたのだが、この曲ではパターンの異なる点灯・消灯により雨の降る様子も表されていた。この武道館においては、自らも舞台装置の、このライブの一部となれる──。……まあ、私は前述の通り買っていなかったのですが。

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06.ガラクタフルワールド

2人のダンサーとは一旦別れ、前方ステージの中央でひたすらに美しい歌唱を披露するメッセージ性の強い曲。ステージ構成の似ている『君と僕のシンフォニー』とは、作詞も作曲も同じ山田悠介氏だ。(編曲はそれぞれ異なる。)演奏は綺麗なバイオリンの音色が入りつつもポップ気味で割とノリやすく、歌声に酔いしれても、歌詞を噛み締めても、跳ねてノってでも良い、なんともライブ向きな曲だ。

間奏では唐突にバンド紹介が始まる。ギター・ベース・ドラム・キーボードに前述したバイオリンが加わる特徴的なバンド構成。そして、楽器の実演とライブ演奏の再開が途切れなく繋がるのがこの上なくカッコいい。

この曲を歌い終わった東山さんは、演奏が続く中で舞台袖に去っていく。

Interlude

『ガラクタフルワールド』の演奏が終わると、間髪入れずに流れてくるダンサブルなBGMと共に、バックダンサーが2人、また2人、また2人と計6人登場。しばらくの間ダンスフロアを堪能することとなる。

鉄の扉を模した映像がバックモニターに移りこみ、次の曲へ。

衣装2着目・ダンスパート

07.StarLight

前奏が始まると同時に扉が開き、東山さんが姿を現す。──って、そこ、動くんかい! そう、バックモニターが文字通り左右2つに別れたのだ。2着目の衣装は、黒のインナーとパンツに白のベスト。バックダンサーの方々は白のインナーに黒のベストとパンツなので、雰囲気が合わさりつつもセンター格がハッキリと表現されている形だ。腰から垂れる青のスカート調なワンポイントも特徴的。

中央から大々的に登場した東山さんはバックダンサーの中に交じってダンスを披露していく。特に間奏中の歌ってないパートではバックダンサーと同じ振り付けになるのだが、そのキレと見せ方は7人目のダンサー、いや、ダンスユニットのセンターと言っても過言ではない程。手持ちのマイクという制約があるにも関わらず、だ。

表現力が追いつかない。このダンスゾーンは是非映像で見て欲しいパートだ。

MC3

6名のバックダンサーの紹介。それぞれが手首に異なる色のバンダナを巻いていて、青の東山さんも含めて、名付けて「レインボーダンサーズ」。

08.My Way

『StarLight』よりなお一層激しいダンスを踊り、サウンドエフェクトも赤系統のライティングもバリバリにキマっている中毒性の極めて高い曲。サビの追っかけがとにかくカッコよく、頭の中にずっと響き続ける。『君と僕のシンフォニー』や、この後の『Rainbow』がメッセージ性の極致だとすれば、『My Way』は演出やライブ感の極致であろう。一度ライブで見てしまうと、もう音源では満足できなくなる。

歌い方も特異だ。『君と僕のシンフォニー』をニュートラルとすると、『Day by Day』『グッバイ・アンブレラ』は甘くキュートな、『ガラクタフルワールド』は一言一言をハッキリと歌い上げるように感じられたものであったが、この『My Way』の低音・力強さはより鮮明に表れている。本人名義でありながら楽曲によってここまで歌い分けがなされていることに驚かされるのだが、この歌い分けこそが『My Way』への没入感をより高めているのだと思う。

アレンジにより間奏が一つ加わり、バックダンサー6名の紹介とそれぞれのダンスソロの実演がなされる。そしてその後東山さん自身もダンスをソロで披露するのだが、その踊りはまるで本業なのかと言うくらい派手で激しい。

09.I WILL

『My Way』の熱狂冷めやらぬ中続けて歌われたのは、1stシングル『True Destiny / Chain the world』のアーティスト版/限定版CDのカップリング曲。Aメロで特に特徴的な四つ打ちはこのダンスパートにピッタリだが、どちらかというと聞かせる・聞き入る曲で、東山さんも透き通った声で歌い上げるような形。そんな中でも間奏では前曲までと同様、キレの良いダンスを東山さんは見せていく。

MC4

今まで披露してきたダンスナンバーにちなみ、声優になる以前から10年ほどダンスを習っていたこと、ただし、合唱とは異なりただただ上達するのが楽しくてやっていたので、今こうして活きているならもっと精を出せば良かった、と。また、高校生のころに初めて買った声優系のフェス映像を見て、一所懸命にダンスのフリコピをしていたが、それから長らく立った今でもそのダンスは身体が覚えていて、こんなに踊るのが好きだったんだ、とも。

東山さんの今まで、声優以前の一つ一つの点がこの武道館ライブへと線で繋がること、いや、自分自身で繋ぐことが出来て、それをMCの場で披露できるということに感銘を受ける。東山さんにとっての「人生のお祭り」という言葉が、大袈裟なものではないのだと少しずつ実感していく。

「虹のペンライト」についてもここで触れていた。いわく、「皆さん、いつの間にか操られてますよ~」と。

10.オトメイロ

このパートの最後と宣言されたのはちょっと意外なこの曲。『My Way』で更に分割されて4枚となったバックモニターには、和ポップ調なこの曲に合わせて風流なムービーが流れたり、「遣らずの雨の向こう 虹が架かるなら」で虹が架かるなど、かなり凝った作り。でありながら、ぴょんぴょん跳ねてアイヤアイヤアイヤイヤササを頭悪く入れまくれる楽しい曲でもある。歌にダンスにしばらく魅せられていた後の久しぶりの合いの手曲で、会場も全体が明るくなりバックモニターの演出でも合いの手を推奨してくるので、客席も賑わっていた。

少し長めにアレンジされた後奏でめいっぱいアイヤアイヤした後に会場は暗転。

Movie

練習風景やPV撮影、アニサマの舞台の様子を映しつつ、武道館ライブ当日に至るまでの東山さんの独白がドキュメンタリー調に語りだされる。

ここについて私から何かしらを語るのは野暮なので、東山さんの言葉をそのまま受け止めて欲しい。

衣装3着目・バラードパート~ラストスパート

11.星ノ標

まずキーボード、続いてバイオリンが入り前奏のアレンジ。この時点ではまだどの曲が来るのかわからないが、アコースティックギターが聞きなれたメロディを奏でると同時に東山さんがフェードイン、次の曲が『星ノ標』であることがわかる。

この曲より衣装替えし、バラードパートへと突入。3着目は白と青がグラデーションのドレス。 夜空のイメージであろうか、青い光に満ちたライティングで会場が美しく彩られ、東山さんの芯の通った歌声が武道館に響き渡る。

このライブに辿り着くまでには苦悩もあったことが描かれたビデオ、そのビデオ明けの1曲目であり、また、しっとりとしたイントロ前の演奏からは、どちらかと言えば『月がきれい』や『Rainbow』が来そうな雰囲気があったため、これらより幾分明るめな印象を受ける『星ノ標』という選曲は意外だった。

MC5

『星ノ標』からはバラードセクションに入ること、また衣装については、『星ノ標』の歌い終わりの空気だとあまり起こらないかと思っていた歓声が聞けて「温かい」と。

バンドについても触れていて、武道館ライブまでに決めるといったバンド名は「なおぼうバンド」「レインボーバンド」などの候補があったが、もうちょっと考えたい、とこの場では一つに選ぶことはしなかった。3

まだまだ1stライブ、次の機会に名付ければ良いし、もっともっと関係を深めていきたい。とまで言ったところで、エンディングトークみたいになったがまだ中盤だよ、と頼もしい言葉。

12.初恋

次の曲は村下孝蔵の『初恋』をカバー。アニメ『月がきれい』ではアニメの内容に会わせて、ジッタリンジンの『夏祭り』やELTの『fragile』、レミオロメンの『3月9日』など沢山の曲を東山さんがカバーしたのだが、この『初恋』は『Bright Heart』でも触れた通り、シングル『イマココ / 月がきれい』のアニメ版カップリング曲にも収録されている特別な立ち位置の曲で、それだけ『月がきれい』という作品にマッチしていた、ということだろう。

入りのMCでは、若い方は「私(東山さん)の歌で初めて知ったという方もいるのかな」とのこと。そんな若い方が私(筆者)で、なかなかカバー曲としての感想、みたいなものは書きづらいのだが、その分アニメ『月がきれい』に思いを巡らせていたりした。

MC6

『初恋』が様々な人に何度もカバーされていたことに触れ、その面々に加われて光栄なこと、そして、『初恋』のように、青春時代に聞いていた、というような(村下孝蔵版『初恋』を青春時代に聞いていたか、という質問にペンライトを振る観客もちらほらいた)思い出になるような曲を歌いたい、と。

13.月がきれい

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『初恋』からの流れで、『月がきれい』。歌い出しから1番、2番、Cメロ、落ちサビで一旦抜いてからのラスサビ、と歌が進行するにつれて東山さんの歌声もだんだんと力が入っていき、感情の高まりを掻き立てられる。美しくもアツい曲目だ。

バックモニターの映像はもちろん月。流れる雲によって姿が見えたり隠れたりする月は、アニメ『月がきれい』の小太郎と茜の関係性、あるいはもっと拡げて、楽曲『月がきれい』で描かれる恋する二人の人間を表しているようで、そこにオーバーレイされる東山さんは、その二人を見守るようで。

MC7

今しがた歌い終えた『月がきれい』を、自らの歌ながら「良い曲だ」と言える、と東山さん。そして、次の曲は『Rainbow』であると。東山さんが作詞・作曲をしたアルバムの題名にもなっている表題曲こそが『Rainbow』であり、かつこの武道館ライブのタイトルでもある、極めて重要な曲だ。それだけに、ここのMCは「長くお話をする」と東山さんも予告する。

アーティストデビューしたときから作詞をしてみないか、と制作チームから(確かプロデューサーの西辺さんだったか。)言われ続けていた東山さんであったが、作詞も作曲もしっかりとは学んだことがないこともあり、なんとなく避けていた。しかし、アルバムを制作するにあたり、やはり1曲は自分で書いてみようとなったとき、作曲ならば、と引き受けた。それは、東山さんの役者観にも深く関わっていて、東山さんは台本や歌詞に自らの気持ちを乗せるのはとても素敵だと思う一方で、感情を自ら言葉にして表現するのがとても苦手に思っていた。作詞は、そんな営みの際たるものではないか、と。

しかし、自らの想いを込めて曲を書き終えたとき、やはり詞も書かなければ、という思いが東山さんにはあった。それは、詞を任せたときに自分の意図とは異なるものが帰ってきたら、ということもあり、また一方で制作チームに「作詞もやるよね?」と後押しをされたということもあり。そうして作詞に臨んだ東山さんは、赤裸々な表現をしてしまうと、エンターテイナーとして、役者としての東山さんとの乖離が起きてしまうのではないか、と悩みつつも、まず自らの感情を動かせなければ、曲を聞く人の感情も動かせない、と一歩踏み込んだ表現を歌詞に取り入れていった。

そうして作詞・作曲:東山奈央のもと作られた楽曲『Rainbow』は、6月ごろに完成。この頃は個人的にも辛い時期だった、と東山さんは言う。そんな中にあって、また、一見暗いフレーズが並ぶこの楽曲にあっても、この曲を暗い曲にしたくはない、最後には虹が架かる曲にしたい、「私と皆さんの」「心が集う曲」にしたい、と。

そしてまた、この『Rainbow』を書いていくうちに生まれた沢山の感謝を、一人選んで伝えるのであればマネージャーであると東山さんは言う。この武道館の上に立つまでの声優活動の8年間、支え続けてくれた、信じ続けてくれた、励まし続けてくれた、と。(声優デビューから8年間同じ方だそうだ。)

一人じゃない、ということ、「皆さん一人一人の心に語り掛けるように歌いたい」と言い、イントロへ。

14.Rainbow

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美しくも儚いバイオリンの主旋律を背に、バラードパートを通して歌っていた前方ステージからセンターステージへ。東山さんの背後から光景を映すBD映像では、まさに四方八方の一人一人が東山さんを見に来たファン──。

この曲は未だに難しい。舞台演出も、表面的な記述に留めてもなお間違った解釈かもしれないと感じるのだが以下に続けることとする。歌い出すと共に灯されたいくつもの光線は、東山さんを囲んで細く細く点で照らし、ゆっくりと円を描いて回っている。それは、まるで鳥籠のように。1番サビに入ると、2階席と3階席の間にある壁面に向けられた無数の光線により会場が少し明るくなり、未だそこに在る光線の檻も見えにくくなった。

曲が進行していき、Cメロを経た落ちサビ、スポットライトに当てられている東山奈央さんが映ったのち4、ラスサビへ。

すると、そこには。虹が架かったのだ。

会場に投げかけられた光線の1本1本がグラデーションを描き、武道館に虹を架けたのだ。ライブ当日の2階席東側寄りの席ではごく若干わかりにくかったが、BDの映像ではアリーナからの見上げる虹も、上空から眺める虹も綺麗に映っている。

MC8

東山さんの心からのパフォーマンスにしばらく鳴りやまない拍手の海。そして、「どんなときでも皆さんを笑顔にできるような、そんな人になっていきたいと思います!」と。東山さんは『Rainbow』に込めた意味、そして、その先を見せてくれる人なのだ。また、「これからも、ずっと一緒にいてください」とも。この絶妙な距離感こそが、東山さんらしさを表しているように思う。

『Rainbow』がバラードパート最後の曲との予告通り、ここからはラストスパート、と会場を一気に盛り上げたてる。まずは次の曲、「タイトルコールを皆さんとしたい」と言えば……!

15.イマココ

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「今どこーーーーーーーーー!?」「イマココーーーーーーーーー!!」だけでメチャクチャ笑顔になれてスゴい。(語彙力)

私個人的にはやはりアニメ『月がきれい』の印象が強いこの曲だが、ドラムス強めのバンドアレンジもあって、こんなに盛り上がる曲だったっけな、と思うくらいに会場も、私も湧き上がる。『初恋』と楽曲『月がきれい』でアニメ『月がきれい』への面影も感じられた分、『イマココ』は曲目の進行に寄り添った形となった。

16.Chain the world

『イマココ』から続けてアニメタイアップの『Chain the world』。こちらはバイオリンの演奏が光っていて、(あまり知らないけど)『チェインクロニクル』の「運命」や「宿命」といった作品感を神妙に現す一方で、ギターやドラムスがライブ特有の高まりを表現していく。

True Destiny』のように、東山さんはステージの上手一杯から下手一杯まで駆け回り、会場全体を煽りに煽り、落としてラスサビ、と正統派ポップスといった感じ。

MC9

終わりを惜しむ声が嬉しいと言いつつも、次の曲が最後の曲、と告げる東山さん。そしてまた、歌い終えたばかりの『Chain the world』を当初は最後の曲にするつもりだったとも。というのは、『Chain the world』は『True Destiny』よりも(トラック順としては後だが)先にレコーディングをした、東山さんの一番最初の曲。そんな曲を最後に歌うのは、東山さん本人としても「エモいやん?」と。

そんなもっともなエピソードを持つ『Chain the world』を差し置いて、最後に来たのは『君の笑顔に恋してる』。アルバム曲を収録中に、恋愛の曲であるはずの『君の笑顔に恋してる』の1つ1つのフレーズに、「私が皆さん(=会場のファン)に感じている気持ちにすごく近い」「私が皆さんに抱く親愛の気持ち」に感じた、そして、これをみんなで踊って一つになればとても楽しいのではないか、と。

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敢えて触れずにいたが、武道館ライブの2週間ほど前にYouTubeにて「振り付け講座」の動画があがっていて、開演前もこの動画が流されていた。それでも覚えていない、覚えきれないファンのために、ここで改めて振り付けの練習(本番中なのだが)をし、いよいよ本編最後の曲へ。

17.君の笑顔に恋してる

武道館ライブを通して一番好きになった曲。

この曲をファンへの親愛の情と読み解き、『Chain the world』を差し置いてまでして曲目の最後に位置付け、しかも会場で一体となって踊ろうと考案する東山さん。だからこそ、押しに押していたこの公演(当初は2時間予定だったところ最終的には3時間近い舞台となった。)の中でも練習のパートを敢えて設けたのだろう。

カラフルな銀テープの降りしきる中で『君の笑顔に恋してる』の歌声が響き渡り、サビに入って振り付けを東山さんもファンもみんなで踊る、そのことは、東山さんからファンへ、またファンから東山さんへの親愛の応酬に他ならない。東山さんにとっての、ファンにとっての、君の笑顔。

ああ、こんなにも美しくて、幸せな空間を東山奈央さんは作れるのだ。歌手活動1年間、声優活動8年間、いや、東山さんが東山さんの人生をここまで歩んできたからこそ、この日のこの空間があった。この場にいると、自分のファン意識だとか経歴だとかはほんの些細なことに思えてくる。東山さんにとって大切な「皆さん」でいられた瞬間であった。

客席全体を明るく照らす照明のもと、振り付け練習から再登場したダンサーがパフォーマンスに加担。最後はバンドメンバーも前方ステージの手前側まで出てきて、全員ジャンプで終了。

本当に、心の底から笑顔になれる曲だ。

ライブTシャツ・アンコール

En1.らぶこーる

En2.ハッピークレセント

この2曲については語る言葉を持ち合わせていない。何故なら『神のみぞ知るセカイ』を当時5見ていなかったのだから……。いや、リアルタイムでアニメや東山さんの神のみイベントを追えていなくとも、武道館ライブに備えて少しは触れておくべきだったのか。何にせよ、『君の笑顔に恋してる』の微かな肯定感から一転、ファンとは追ってこそ、ということを早くも痛感させられたのであった。

補足しておくと、歌うべきでは無かったなんてことを言うつもりはもちろん微塵もなく、当時も今も絶対に歌うべき、歌って良かった曲目だったと考えている。

MC_En1

『らぶこーる』、『ハッピークレセント』を明けてのMC。 キャラクターソングを歌わず、東山さん自らの名義曲のみを歌うという形でライブを歌い切り、キャラクターへの感謝を表すことも考えたが、1stライブの会場が日本武道館になると聞いたときに、やはりかのんちゃんの姿が思い浮かんだ、と。フライングドッグとジェネオンNBCのレーベルの違いを関係各位の厚意で乗り越え(そもそもこの日はNBCのレーベルイベントと被っていた)今こうして披露することが出来た、と。

かのんちゃんのシンボルである黄色いリボンを外し、「東山奈央に戻りました」と。そして、「武道館ライブのBDパッケージ販売」「ファンクラブ『虹のわっか虹のわっか』創設」と「3rdシングルの発売決定」が発表され、3rdシングル表題曲、その名も『灯火のまにまに』を初披露。

En3.灯火のまにまに

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タイアップ先の『かくりよの宿飯』の作風に合わせ、『オトメイロ』に近い雅な詞の雰囲気に、和楽器(MVでは三味線?がフィーチャーされている)も大幅に加わって和ロック色が強くなったこの曲。東山さんの歌声もより凛々しいものとなった。

アンコールの真ん中に持ってこいな、タイアップシングルらしい正統派な曲構成。

MC_En2

ここまでのアンコールを振り返り、かのんちゃんの2曲、それは、かのんちゃんだけでなく、沢山のキャラクターに支えられて今があり、そして『灯火のまにまに』を「未来に向かう私」と表現する。「人生のお祭り」と、東山さんをして言わしめたこのライブ。それはなにも今までのことだけに限られたものではなく、未だ起きてない、この先のことも含めて、東山さんの人生なのだ。それを、これからリリースとなる新曲を歌うことで体現するに留まらず、言葉として表現できることに役者としての格好良さをこれでもかと体感させられた。

「皆さんの笑顔がとても嬉しいです、皆さんの笑顔が宝物です。」と感無量の表情を東山さんは浮かべ、本公演の本当に最後の曲へ。

En4.君と僕のシンフォニー

最後に歌うのはもうこの曲しかないでしょう。

冒頭のフレーズの後に、ライブTシャツに着替えたバックダンサー、更には公演前に何回か配信されたSHOWROOMのオフィシャルサポーター、ゆんさんも登壇し、彼女たちと共に東山さんがステージの端から端まで駆け抜けていく。最後の曲ともなると、この広々とした武道館のステージですらまだまだ狭いように思えてくるのだから不思議だ。

それにしても、抜群のメッセージ性を持ち合わせながらも、ライブの曲目としてもポップな盛り上がりがあるのだからこの曲はもう既にとてつもない存在となっている。僅か数時間前に歌われた曲と同じだとは思えないくらい、異なったさまを見せてくれる。あるいは、このライブを通して東山さんに伝えられた魂のメッセージで、この曲の見え方も変わったということだろうか。

ダンサーとゆんさんが前方ステージに残る中、東山さんが一人中央ステージに向かい、Cメロを歌い上げ、

「ありがとうーーーーーーーーーーー!」

紙吹雪が舞いしきる中、ラスサビを歌う。

君と僕のシンフォニー 色褪せないメロディー
ここから始まる未来を描くよ
終わらない五線譜に
どんな夢も並べていこう
ずっと隣で笑ってね

いやぁ、なんて、この日この場所のためにあるような、そんな歌詞なんだ。

この後、BDではスタッフロールが流れ切ってしまうくらいの時間をかけ、今日のこの公演への感謝の思いを表現した後に、東山さんは一面の青空が映し出されたバックモニターの前に。バックモニターは二つに分かれ、東山さんは空の彼方へと歩みを進めるかのごとく、退場。そして、また一枚に戻ったバックモニターの青空には、虹が架かる。最後の最後までニクい演出だ。

怒涛の3時間が、幕を閉じた。

終章

このライブが終わった瞬間から、ライブBDが発売されて20回以上フルで見ても、現在に至るまでライブ『Rainbow』の話を(流石に当初より頻度は落ちているが)知人とよくしているように思う。どこがこんなにも私(や知人)を惹きつけてやまないのか、それは、ライブの完成度もさることながら、東山さんの人となりに拠るところ、その人となりが余すことなく表現されていた、ということが大きいのだろう。東山さんにとっての出口であって、私にとっては入口のイベント。

そしてまた、ライブ『Rainbow』の話をしていると出てくる話題が、「自分の好きな声優にも『Rainbow』みたいなイベントをやって欲しい」ということだ。

終わり。


  1. ひとりひとりのエピソードを差し置いてデビューブームなどと言うのは乱暴であるのだが、ここはひとまず。 声優ソロアーティストデビュー年表(1979~2019年)

  2. 東山奈央さん 1stアルバム&武道館ライブに向けて意気込みを語る | アニメイトタイムズ

  3. ちなみに、クリスマスのFC限定ライブイベント『にじかいっ!!』にて「レインボードッグス」というちょっとダサめなバンド名に決まる。何故……。

  4. 片側(西側?)からスポットライトが当たっているが、もう片側(東側?)からもスポットライトが当たっていたように思うが記憶が相当怪しい。ただ、そうであれば、2つのスポットライトが「2つの星」という解釈も通るかな、と思ったり。

  5. 武道館ライブの後、2018年夏ごろアニメ1期まで見た。